裁判傍聴から人生を学ぶココロノトモのブログ

傍聴した裁判から学んだ事、考えた事をまとめています

家族が起こした犯罪と向き合うことと、家族の形を存続させることの難しさ

先日、NHK 事件の涙で「パリ女子学生殺人事件」の残された家族についての番組があった。

www.nhk.jp

 

この事件については、一部しか知らなかったけれど、おそらく当時は相当な話題だったのだろう。加害者は心身喪失でパリで無罪となったが、加害者が殺人事件を起こしたことは事実で当番組はその家族のエピソードだった。

 

この殺人事件は犯人佐川の留学先のパリで起き、オランダ人友人女性を殺害、その肉を食べたという衝撃的な事件だが、当時パリに留学できることからも相当な金持ちだったのだろう。残っていた家族との映像からも裕福で家族仲も良かったように見え、生い立ちに問題があるようには全く見えない。

 

この番組を見て、一番印象的だったのは、事件を起こし日本に戻ってきてからも、佐川本人と家族は、事件については一切話をしなかったことだ。事件後も、仲のよい家族を演じ、その後両親も加害者佐川も亡くなり最後に弟だけが残された。

 

日本の裁判でも、被告家族の証言で必ず更生についての話が出てくるのだけれど、ほとんどが通り一遍の「今後は同居し、出来る限り監視します」「なるべく連絡を取るようにします」などの回答を述べるだけにとどまり、被告と家族が罪にとことん向き合っていると感じられたことはあまりない。

 

もちろん、拘留されていることも多いので、時間的な制約もあるし、自宅でじっくり話すことが出来ないからという理由もあると思う。

 

ただ、今回のNHKの番組を見て、家族の一員が犯罪をした事実に向き合うことの難しさ、家族としてサポートをしなければならないという葛藤、家族であることによって加害者側とみなされ社会からの批判や孤立・・・被害者家族の苦難に思いを巡らせることができた。

 

家族の一員が犯罪を起こしても、家族として日常は続けなければならない。本当の意味で家族として罪に向き合ったら家族としての日常が続けられないのかもしれない。加害者家族はそのジレンマに苦しんでいるのだろうと思う。