裁判傍聴から人生を学ぶココロノトモのブログ

傍聴した裁判から学んだ事、考えた事をまとめています

耳の障害を持った被害者女性の証言を聞いて

先日、性犯罪被害者女性の証言を聞く機会があったのだが(被害者女性は別室で裁判官や弁護士とはビデオリンクで会話する方法)、その被害者女性は耳が悪かった。

 

証言の前置きで耳が悪いという説明はあったが、 具体的にどのような障害なのかまでは分からない。ただ、質問を聞いてからの答えが非常に長かったり、かなり無言の時間が経過した後、もう一度質問の内容を聞くといったことが何度もあったため、聞こえにくいというよりは、聞こえているが、内容が分からない可能性があるのではないかと感じた。

 

 

「APD」と呼ばれる聴力は問題ないが、聞き取りが困難な症状を持つ人がいる

この事件を傍聴した後、このような症状を持つ人々について気になっていたところ、『隣の聞き取れないひと』という本を見つけて読んだ。その本には、聴力に問題はないのに特定の状況下で相手の言葉が聞き取れなくなってしまう困難を抱える人々について書かれていた。

 

この状態は、Auditory Processing Disorderを略して「APD」と呼ばれているが、英語圏の研究によれば、APDの子供の発生率は7%とされている。

もちろん、英語圏のデータをそのまま日本に当てはめることはできないが、APDの人々は確実に存在しているにもかかわらず、まだ日本では認知度が低い。

 

APDの診断にたどりつくこと自体が難しい

この本によるとAPD当事者たちは、共通して子供の頃は聞き取れないことが普通だと思っていたと語っている。聞き取れない場合でも、常に聞き返すわけにはいかず、適当に話に合わせることになる。しかし、会話が進まずに繰り返し聞くと、相手から「面倒くさい」と言われてしまい、ショックを受けたというエピソードもあった。

現状、APDに対応できる病院や施設はまだ限られており、病院を受診しても異常とされず、気にしすぎだと言われることもある。また、APDが発見されても、現時点では根本的な解決策は存在しない。

 

メジャーでない障害についても知ること、想像してみることは重要な第一歩

今回の被害者女性がAPDかどうか定かではないけれど、障害を知るきっかけとなった。被害者は性犯罪にあってしまったのだが、健常者でも被告の強引さにあらがえなかったと思うが、さらにAPDのような症状を持った被害者だと拒否するのが難しかったのではないかと想像できた。

周りの人の言っていることが分からないけれど、なんとなく合わせて生活するしかなかったとしたら、目の前の人に合わせてしまうのは健常者より強く作用するはずだ。

 

障がい者を直接助けたり、直接役に立つ行動が出来るわけではないけれど、自分が知らない障害が多くあること、また障害を持つ人についての想像をしてみることは誰でも出来るしやるべきだと思う。