先日特殊詐欺の出し子の裁判を傍聴した。
仕事内容は、他人名義のキャッシュカードで動作確認と金を引き出すこと。
報酬は引き出した金の1.2%、引き出せなくても日当3万円。
出し子役を担った被告人は、名前も顔も知らない指示役から電話で
「コインロッカーの中に入れてあるキャッシュカードを出せ」
「ATMでは(顔がばれないよう)カメラに付箋を貼れ」
「1枚ずつ別のATM機でキャッシュカードが使えるかどうか調べろ」
などと指示を受け、まるであやつり人形のように指示通りに行動していた。
複数のキャッシュカードはそれぞれ別人名義であったし、ATM機でキャッシュカードが使用できるかどうかのチェックの際、使用できないカードもあった。
当然、自分は詐欺に加担しているのではないかという思いはあった。
ただ、コンビニのバイトも辞めている。その思いを肯定してしまったら「この仕事」を続けることは出来ないし、コンビニバイトでは得られない高額の報酬を得られなくなってしまう。
被告は「この仕事」を誘ってきた人に聞いた。
「これって詐欺じゃないですよね?」
答えは「詐欺の仕事を紹介するわけないでしょう。詮索しないようにしてください」
被告は言われたとおり、それ以上考えないようにした。
これでコンビニバイトよりラクなのに多額の報酬を得られる。
彼女は捕まった。
今までの前科はなかった彼女。超えてはいけないラインを超える重要な最終判断を聞いてはいけない人に聞き、それ以上考えないようにすることで超えてしまったのだ。
彼女への求刑は懲役3年。
求刑のあと手錠と腰縄をつけられ、刑務官につきそわれて法廷を出た。
大切なジャッジを他人にゆだねようとする行為、それ以上考えないようにする行為も重罪である。