不倫での慰謝料請求事件。
ダブル不倫、サレ夫が妻の不倫相手の医師を訴えた裁判だった。
裁判の原告・被告どちらでもないけれど、この事件の核となるのは今日証言をした不倫した妻。不倫妻は、産業カウンセラー。
かつて不倫妻自身が以前病んだ時に産業カウンセラーに救われ、自分も産業カウンセラーになりたいと、お金も時間も労力もかけて産業カウンセラーになった。
でも資格を取ってからのが大変だった。
仕事を取ってくるのも大変だし、仕事自体も経験不足でなかなかうまくいかない。
そんな中、過去の職場で知り合った医師とつながり不倫の沼にはまっていく。
医師は親族皆医者である万能感からなのか、人を見下すところがあった。人を見下すということは相手がいないと出来ないことだ。自尊心が低いその不倫妻を操るのもちょうどよい遊びだったのかもしれない。
医者も大手企業の産業医の仕事を失った、医者の妻にも不倫がバレた。
不倫妻も夫から間もなく離婚を突き付けられる、カウンセラーの仕事もなくなった・・・
医者も不倫妻もその周りの人も、なくしたものははかりしれない。
最後、証人尋問で憔悴しきった不倫妻が数十秒答えにつまった後、泣きながら言ったのは、
「もう産業カウンセラーの仕事は・・・もうすることはありません・・・」
あぁ、ここですべてが私の中でつながった。
不倫妻が一番なくしたくなかったものは、カウンセラーの仕事だったのだ。
カウンセラーは人に頼られる仕事、患者に求められる、自分の存在を他人によって承認されるようなものだ。彼女はこの仕事に救いを求めていたのだ。
不倫なんてそこらじゅうで起きている出来事だけれど、この不倫という出来事の核となる部分は、不倫妻の自分が救われたいという想いが発端で、その想いを利用したのが医師、という構図だと思った。