裁判傍聴から人生を学ぶココロノトモのブログ

傍聴した裁判から学んだ事、考えた事をまとめています

「悪いこと」をする時の理由や気持ちなんて言葉で簡単に言い表せない!

被告は50代、専業主婦。
夫は全国転勤がある商社マン。

万引きがやめられない、いわゆるクレプトマニアだ。

今回の罪は、スーパーでアメ2袋、金額で402円の万引き。

夫の稼ぎで金銭的な不自由はないが、夫の転勤で精神が不安定になりがちで、その時に万引き癖が発症してしまう。

過去に4回はつかまっており、もう後がない。

夫も被告である妻のサポートを約束する。

でも(捕まっただけでも!)もう4回目なのだ。検察官も追求が厳しい。

被告は、前回・前々回と何が違って今回はもう二度と過ちを起こさないことを周りに説明できなければならない。

まず万引きの、どの瞬間がきっかけで被告が過ちを起こしたのか、検察官は厳しく追求した。


検察官:「売り場でスマホを取り出そうとして財布を忘れたことに気づいたんですよね。なんで財布を取りに帰ろうとならなかったんですか?」

被告:「いや…もうやけくそみたいな感じで…」

検察官:「店から家までは何分くらい?」

被告:「自転車で10分くらいです」

検察官:「では往復20分ですよね。時間がもったいないから万引きした?」

被告:「…時間とかじゃなくて…今考えればだめなんですけど、その時はそんな精神状態じゃなくて…」

検察官:「でも、お金に困っているわけじゃなかったのなら、財布を取りに行く時間がもったいなかったということでは?」

被告:「…いや、時間がもったいないとかじゃないんです。もうどうでもよくなるっていうか…」

この検察官には、この被告の言っていることは多分通じないと思った。

検察官は、おそらく生まれた時からの環境、文化的資本、健康資本、精神的な資本、圧倒的に恵まれている。最初から持っているものが「ある」と認識するのは難しい。

彼の中では物事はすべて論理たてて存在している。人間の頭の中も。

でも「悪いこと」をする時の理由や気持ちなんて言葉で簡単に言い表せるほど一本線でつながっていない。

人生は迷路みたいに、一本道で途中右に行くか左に行くかだけでどんどん前に進むゲームではない。絶望してその道が見えなくなったり道自体を爆破させたりしたくなることもあるのだ。