この本を読んで、日ごろ疑問に思っていた『性犯罪・性的いやがらせをする人の常套句「合意があった」の言葉の内心はどうなっているのか』という疑問が少しスッキリした。
「ずる 嘘とごまかしの行動経済学 ダン・アリエリー」という本。
ずる 嘘とごまかしの行動経済学 (ハヤカワ文庫NF ハヤカワ・ノンフィクション文庫) [ ダン・アリエリー ] 価格:880円 |
実験を交えながらの一番しっくりした解説は、私達は「できるだけトクをしたい」という願望がある一方「よい人、正直で立派な人でいたい」という相反する願望が同時にあり、よい人でいたいという願望が異常に強いということだ。私達の行動はこの二つの相反する動機付けによってかりたてられている。
トクしながら自分を正直ですばらしい人間だと思い続けるには、自分をごまかすしかなく、その両者のバランスをとろうとする行為こそが自分を正当化するプロセスだという。
性犯罪で客観的にみてどう考えても合意があるはずないのに、「合意の上だった」などと平然と主張する被告がどういう思考回路なのかと不思議だったが、この本で「自分を正直ですばらしい人間と思い続けるための自分をごまかす力がおどろくほど強い」ことが分かり、日ごろの疑問が少し解明された。
通常(?)の犯罪、例えば傷害など、相手に傷をおわせてもよしとされるケースはないが、性行為自体そのものは、お互いが合意していればこれは犯罪ではない。
だから、性犯罪者は相手が合意していると自分をごまかし自分の内部のバランスをとるのだ。本気で相手が合意していると思っている被告も多いだろう。
性犯罪は、犯罪なのに自分の中ではつじつまをあわせてしまうことができるため、やってしまえばクロという他の犯罪とは異なる性質を持っているといえる。