裁判傍聴から人生を学ぶココロノトモのブログ

傍聴した裁判から学んだ事、考えた事をまとめています

国に不健全な職業と指定されてしまった性風俗の健全な部分

先日、性風俗業者を新型コロナウイルス対策の持続化給付金の対象外とすることは憲法違反かを問う裁判が行われた。

 

その裁判の中で性風俗業を「性を売り物とする本質的に不健全な営業」と「許可という形で公認するのは不適当」と過去の国会答弁があったことが引用され、Twitterなどでは少し騒ぎになっていた。

 

そもそも健全不健全とはあいまいな概念で、状態を表す言葉だと思う。

 

業種全体を指定して不健全だと誰かに決められることではない。性風俗のイメージは日陰の業種なのかもしれないが、売春婦は世界最古の職業とも言われているほどで、これまでもこれからもなくなることはない。法的に様々な規制が行われたとしても形を変えて営まれていく。

 

私は性産業に詳しくないけれど、性産業で働く人が少なからず登場するので想いをめぐらすことがある。以前傍聴して特に記憶に残っているのがある被告と風俗嬢の関係性だ。

 

ADHD傾向や元々の性格などから周りの人とあまりうまくいっていなかった被告。

 

家族からも見放され、家族が一人二人と家を出ていき、家族で住んでいた家に一人残された被告。友人も知人もおらず全く人と関わらない生活。電話も必要ないので解約してしまい、唯一会話をするのは時折通う風俗嬢のみだった。

 

もう生きていてもしょうがないと自暴自棄になり車で交差点に突っ込み無差別殺人を起こす計画を立て、最後にと事件前日、その風俗嬢に電話。

 

最終的に被告は事件を起こしてしまったけれど、事件を起こすまでの苦悩の日々はこの風俗嬢がこの被告の心の糸をギリギリのところで支えていたと私は思った。

 

「不健全」な業種の中で働く人がどれだけ多くの人の心を支えているのだろう。