裁判では、被告がいつから犯行を考えていたかを証明することは大きなポイントである。
例えば、
殺人なら前から殺そうと思っていたのか、とっさに殺してしまったのか、
性犯罪なら前からたくらんでいたのか、とっさに犯してしまったのか、
など。
これは、犯行を考えついた時から実際の犯行時までに時間があればあるほど、考え直す機会もあるし、道具を用意したり計画を練ったりと犯行の準備を入念にすることにつながり、罪を起こそうとする意思が強いと判断されるからだ。
いつから考えていたかというのは、被告の心の中の問題、被告自身は自分が「この時点から考えていた」や「とっさに犯してしまった」と言えばそれが通ると思ってしまう。
ただ、被告がいつからと言ったから(通常は罪が軽く判断されるよう「突発的な犯行」であることを主張する)そのまま通るはずもなく、被告の心の中に起きた出来事を検事が暴いていくというところが裁判の見どころでもある。
例えば、隣の家に住んでいる以前から交流がある被害者にわいせつ行為をした裁判ではこのような感じ。
玄関先で被害者と立ち話をして被害者宅に招き入れられ、会話をしている時に口論になった。その後殴り気絶した被害者の服を脱がせてわいせつ行為をした事を、被告は突発的で最初はそのつもりはなかったと証言。
検事:被害者宅に招き入れられてすぐ被害者に抱きつきましたよね?
被告:・・・はい。
検事:なぜ抱きついたんですか?
被告:前にそういう事(抱きついた事)があったから、思い出して・・・。
検事:では、最初から性的な事をしたいという気持ちがあったということじゃないですか?
被告:(30秒ほど沈黙)・・・・多少は・・・ありました。
このような感じで最初からわいせつ行為をしたい意思を持っていたを暴いていく。
前述のように分かりやすいのではなく、しれっと事実の質疑応答をして暴くパターンもある。いつも護身用におもちゃの手錠を用意していたと主張する被告に対し、
検事:手錠は皮ケースに入っていたのですか?出ていたのですか?
被告:出ていました。
検事:出していたのですね。
これは事実を確認する軽い質問のように聞こえるが、「わいせつ行為をしやすくする為の手錠を事前に用意し携帯し、しかもすぐに取り出せるようにケースから出していたこと」を証明する質疑応答なのだ。
検事が導き出したい答えから質問が作られている。その質疑応答は検事の腕の見せ所であり、質問の意図を深く考えるとさらに理解が深まる。